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小鳥のさえずり。 カーテンからはうっすらと光が射して。 (今日は晴れかな…) せつなが居なくなって、心にぽっかり開いた穴。幾度と無く涙した涙。 寂しさを埋める事が出来なかった。 幸せゲット…出来なかったよ。 苦しい日々が続いた。 眠れない日もあったぐらい。 思い出すのは、楽しかった日々の事ばかり。 居ないのわかってるのに、開けてしまうせつなの部屋のドア。 ある日、あたしは夢を見て。 ベランダデートしてたんだ。一緒に暮らしてた時と同じように。 そしたらね、せつなはあの言葉を口にしたんだ。 ―――私は素直なラブしか知らないけど――― せつなはあたしにチャンスをくれたんだと思う。 それが夢の世界であったとしても。 これを逃したらもう..... 「あたしは――――せつなと一緒に居たい。もう一度…いや、ずっと一緒に暮らしたいんだ!」 素直な気持ちをぶつけた。二人出会った記念日に。 あたしたちだけの特別な日に。 二人だけしか知らない大切な日に。 「私もね、本当は―――」 今思えば、意外な展開だったかもしれない。 生真面目なせつな。「離れていても一緒よ」、そう答えてくると思ってた。 あたしは苦笑いして、次の話題に振る練習だってしてたぐらいだし。 自分に臆病になってたのかな。 せつなの〝夢〟をジャマしちゃうんじゃないかって。 自分が幸せになるより、友達が幸せになった方がいいもんね。 その姿を見てる事が、何よりも幸せなんだもん。 「ねぇ、ラブ」 「何?」 「もっと私を―――愛して欲しい」 それは、あたしが初めて聞いた言葉。 せつなの……願望だったと思う。 潤んだ瞳にはあたししか映っていなかったから。 その日の夜。 あたしとせつなは結ばれた。 初めての人は東せつな。初恋の人。 一生忘れない。一生の思い出。 また記念日が出来たねって、何度も唇を重ねた。 互いの体を何度も愛撫し、何度も幸福を招き入れた。 本当に。 本当に嬉しかった。 「…ラブ?」 「あ、起こしちゃった?」 窓際に立ったあたしを見て、せつなはきょとんとしている。 「久しぶりに晴れそうだよ今日」 満面の笑顔で答える。朝日にも負けない輝きで。 「でも今日は祝日でしょ?学校も無いんだし…」 まだ眠たそうな声が愛らしくて。 「じゃ、もう少しだけ寝ようか」 開きかけたカーテンを閉めて、もう一度二人だけの世界を作る。 ベッドに潜り込むと、再び愛おしき彼女(ひと)の温もりがあたしを襲ってきた。 それは、あの時と変わらない温もり。 それは、ずっと変わる事のない温もり。 再び始まった二人の仲。 もう離さない。そう心に誓いながら。 温もりを―――抱きしめて ~END~
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少し熱めのシャワーを、 頭から浴びる。 火が灯ったように、 体が熱を帯びる。 ほとんど休みの日がなかった私を見かねてか、 半ば強引に、四つ葉町でのお休みを決められた。 ラブの部屋の鏡を通して、 手紙を送った。 喜ぶあまり飛び跳ね過ぎて、 ベッドの角に足をぶつけている。 思わず、笑みがこぼれる。 ラブのことは、鏡を通して ずっと見ていた。 目覚ましを何個もセットして、 一生懸命、早起きしていること。 頭を抱えながら、勉強も 頑張っていること。 ダンスの練習も、部屋で こつこつやっていること。 そして、時々、私の名前を呼びながら ひとりで、していること。 四つ葉町に、帰ってきた。 懐かしい顔が、揃っている。 全速力で駈け寄ってきたラブに、 そのままの勢いで抱きしめられる。 倒れそうになる体を、 何とか支える。 首に回された腕。 私を呼ぶ声。 髪の匂い。 ずっと、会いたかった。 抱きしめ返す腕に、力が入る。 もうひとつの感情が、 頭をもたげる。 疼き。 みんなの後ろを、 ゆっくり歩く。 交わしているのは、 たわいのない会話。 指を絡めて、繋いだ手。 手のひらを離し、ラブの親指が 私の手のひらで円を描く。 もうひとつの、 ラブの気持ち。 体に、じわりと 痺れが走る。 ボーリング場で、 ドーナツカフェで、 食卓で。 絶えず、触れあう手。 指を通して、伝わる思い。 我慢、できないよ。 一緒にお風呂に入ろうとするラブを、 必死で食い止めた。 止められる、自信がない。 ゆっくり、ひとりで お風呂に入る。 体が熱いのは、 シャワーのせいだけじゃない。 全身、くまなく泡をたて、 きれいに、きれいに洗う。 髪のトリートメントも、 念入りにする。 湯上がりにドライヤーを当てると、 さらりとした髪が、いい香りを纏う。 私の部屋は、 何も変わっていない。 ベッドに腰を下ろし、 髪をきれいに梳かす。 電気を消す。 胸の鼓動が、一気に高まる。 肌が、粟立つ。 全身が、待ちわびるかのように 細かく震える。 ノックの音に、体が震える。 すでに感じる、 あふれる感覚。 上気して、潤んだ瞳のラブを 迎え入れ、今度は私が抱きしめる。 ぎゅっと、力を入れる。 ラブの匂い。 胸いっぱいに、吸い込む。 首すじに、ラブの唇が触れる。 私も、ラブの首すじに唇を寄せる。 唇を這わせながら、 荒くなる、鼓動と吐息。 歯が当たりそうな勢いで、 唇を押しつけ合う。 鼻から漏れた息が、 顔に吹きかかる。 角度を変えながら、 何度も唇を重ねる。 お互いの、梳かしたばかりの髪を 両手でくしゃくしゃと乱す。 もつれあうように、 ベッドに倒れ込む。 もどかしい手つきで、 お互いのパジャマをはだける。 お互いの全身で、 触れあう。 屹立した乳首。 たっぷりとうるおった、 敏感な部分。 擦れあわせる度に、体が ぶつかりそうなほど跳ねる。 たまらずに、漏れる声。 中で、かき回しながら、 蜜に舌を埋めながら、 お互いの名前だけ、 呼び合う。 お互いに、体を波打たせて 甘い頂点を味わう。 鎮めるような優しい愛撫のなか、 軽い眠りに、吸い込まれる。 何度も、繰り返す。 まどろみから覚めると、 朝の光が差し込んでいた。 目の前で、寝息を 立てている、ラブの顔。 満たされた、幸せな表情。 その瞳が、 ゆっくりと開く。 「...おはよう、せつな」 激しく乱れた自分を思い出し、 思わずラブに背中を向けた。 くすっと笑ったラブに、 後ろから抱きしめられる。 思わず、体を震わせた。 背中に、何度も、 ゆっくりと唇が触れる。 少しくすぐったい感触のなか、 心の奥まで届く、ラブの想い。 寝返りを打ち、私もラブのほおに 長い時間、唇を押しつけた。 私の想いも、同じだからね。
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あたしを愛してくれる人。 あたしが愛している人たち。 胸いっぱいに染み渡る温かい気持ち。 瞳で、笑顔で、仕草で、言葉で、 あたしを幸せにしてくれる。 せつなには、そんな人が今、側に居るのかな? 「ねえ、せつな。せつなの幸せは何?」 せつなが居なくなって、もう一ヶ月がたつ。 せつなを想う気持ち。 今日あった出来事。 毎晩、せつなの部屋に来て、語りかけるのが習慣になっていた。 「私の幸せは、みんなを笑顔と幸せでいっぱいにすることよ。」 せつなの声が聞こえたような気がした。 見上げた星空の光が、せつなの涙みたいに見えた。 「じゃあ、せつなの笑顔と幸せはどうなっちゃうの?」 それが、せつなの幸せならそれでもいい。だけど思うんだ。 メビウスのために命を捨てようとした。 あたしたちのために、一人で占い館に行った。 そして、ラビリンスの人たちのために、自分の気持ちをこの部屋に置き去りにして、 一人でラビリンスに行ったんじゃないかって。 あたし、言ったよね。 自分の幸せも、みんなの幸せも、どちらも大切だって。 せつなは、みんなの幸せのためにラビリンスに行ったんじゃないの? 少なくとも、お別れの時のせつなの笑顔は寂しそうだった。 初めて会った頃のような、我慢してるような笑顔だったよ。 何も持って無い少女が、命を失ってまでして、ようやく手に入れた小さな幸せ。 それすらも投げ打って、人のために尽くそうとしてる。 そんな気がして悲しくなる。 あの時は言えなかった。 確かにラビリンスの人たちには、せつなが必要だった。 だけど。 ――――せつなは、幸せになっていいんだよ。 ――――自分の幸せを見つけていいんだよ。 おやすみなさい、せつな。 必ず幸せ、ゲットしようね。
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「ねぇ、ラブ。あの子たち、何やってるの?」 学校からの帰り道。せつなが不思議そうに、道行く子供たちを見やる。言われて振り返ったラブは、数人の小さな女の子たちがキャーキャーと笑い合っているのを見て、ああ、と笑顔で頷いた。 「あれはね、しりとり、っていう遊びだよ。」 「しりとり?」 「そう。何か言葉を言って、その言葉の最後の音から始まる言葉を続ける遊び。例えば、あたしが『くも』って言ったら、せつなは『も』から始まる言葉、例えば『もり』って言って、次にあたしが『り』で始まる言葉、例えば『りんご』って言う、っていう感じ。」 「へぇ。面白そうね。」 「試しにやってみる?あ、言っとくけど、『ん』で終わる言葉を言ったら負けだからね。それと、同じ言葉を二回言うのもダメだよ。じゃあ、あたしから行くよ?まずは・・・あき。」 「じゃあ私は『き』から始まる言葉を言うのね?じゃあ・・・きいろ。」 「ろうそく。」 「くるま。」 「まくら。」 「ラブ。」 「ん?」 「だから・・・ラブ。」 「???」 「あの・・・『ら』から始まる言葉だから・・・。」 「わはー、そっか!うーん、人の名前ってオッケーなのかなぁ。ま、まぁいいや、人の名前でもオッケーにしちゃおう!えーと、じゃあ『ぶ』からだから・・・ぶどう。」 「うし。」 「しるし。」 「しあわせ。」 「せつな!」 「なぁに?」 「えへへ。あたしもお返し。『せ』から始まるから、せつな、だよっ。」 「ふふっ。だから、『な』から始まるから、なぁに?って言ったでしょ。」 小首をかしげて嬉しそうに笑うせつなに、ラブの頬がうっすらと赤く染まる。 (せつなったら、そんなの反則・・・っていうか、その笑顔が反則だよぉ。か、可愛いすぎる!) 「あはは~、そ、そっか!じゃあ、次は『に』だね。に・・・に・・・あれ?ダメだ、ニンジンしか浮かんでこないよぉ。」 いつの間にか、二人は家の玄関の前に立ち止まっていた。玄関でその様子を見ていたタルトが、呆れたように声をかける。 「ピーチはん。今のあんさん、まさに『に』で始まる顔してまっせ~。」 「何よ、タルト。」 「そんなにデレデレして~。まさに、『にやけ顔』やがな。」 お後がよろしいようで。
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ラブ「ずっと幸せだったのに。悲しすぎる、、、」 せつな「どして?」 ラブ「もーすぐ夏休み終わっちゃうぢゃん!(ToT)」 せつな「でも学校って楽しいんでしょ?」 ラブ「うん。。。でもさ、今年の夏休みは特別な想いがあるんだ。」 せつな「美希やブッキーはその理由知ってるの?私にも教えて欲しいわ。」 ~しばし沈黙~ ラブ「まだ誰にも教えてないよ。せつなには・・・、特別教えてあげるね。」 せつな「うん。」 ラブ「実は好きな人が出来たんだ。ものすごーく好き。大好き! 私の夏を楽しくしてくれた。」 せつな「ラブが好きになるんだから幸せな人ね。」 ラブ「くすくす。。。もぅその人、幸せゲットしてるかもよ~♪」 せつな「???」 ラブ「鈍感すぎるのもまた、可愛いトコだけどね。」 チュッ♪
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今日は世界中で一番チョコレートが飛び交う日。ここ、私立鳥越学園中等部もまた、その例外ではない。 芸能人のタマゴたちが通う私立の学園という環境のせいか、普段からお菓子を持ち込む行為は黙認されてきた。もちろん、授業に差し障りのない範囲内で。 当然、今日のような特別な日ならば、学園にチョコレートが存在しない方が不思議と言えた。 いつの時代にも、学園にはアイドルという存在は付き物である。だがしかし、蒼乃美希はひしひしと実感する。自分にはその役目は少々荷が重すぎる、と。 そう実感するくらい、両手にひとつずつ持つ紙袋はずっしり重かったのだ――――ぱんぱんに詰め込まれたチョコレートのせいで。 いつもより距離が長く感じた帰り道をようやく歩き終えた美希は、勝手口を開けるとリビングのソファに雪崩のように座り込んだ。 「た……ただいま……お、重かった……」 「おかえりなさい、美希」 声のする方に振り返ると、そこには制服の上に真っ赤なエプロンを身につけた可憐な少女の姿があった。 「せつな! 来てたんだ」 「おばさまから、お店が忙しいから手伝ってって連絡もらったの。さっきひと息ついたところよ」 「ごめんね、いつもママが勝手に……」 「いいのよ。バイト代はずんでもらえるし、私も助かってるから。それより、今年もずいぶん多いわね。去年より増えたみたい」 勘のいいせつなのことだからすぐに気づかれて当然だったのだが、去年とは違う点がある分、美希は焦りを感じてしまう。 去年はせつなはただの友達だった。けれど、今年は違う。少なくとも、美希にとっては。 「べ、別に欲しくなんてないのよ!」 「そう」 「重いし、手が痛いし、お返しも大変だし……」 「そう」 「だけど、断り方がわからなくて」 「……そう」 ふて腐れたように言う美希は、心の中で言い訳がましい自分に舌打ちしたい気分だった。 対するせつなは、じっと何か考えこんでいる。そして、ふいに話し出した。 「教えてほしい?」 「え?」 「断り方」 「……うん」 「こう言えばいいわ。好きなひとがいる。だからもらえない、って」 そう言うとせつなは、くるりと背を向けてキッチンへと進み、弱火にかけていたお鍋をかきまぜ始める。杓子ですくってマグカップに注ぐと、ぷんと甘い香りが立ちのぼり美希の鼻孔をくすぐった。 「……何の匂い?」 「飲めばわかるわ。はい」 「……?」 熱々のマグカップを、せつなはテーブルにそっと置いた。湯気の立つカップには、とろりとした真っ白な液体。 美希は黙ってひとくち、口に含む。ふくよかな甘味が拡がった。 「……ホットチョコレート?」 「ホワイトチョコレートで作ってみたの。美希好きでしょ」 「うん。美味しい、すごく。……ありがと」 胸が苦しい。嬉しすぎて。目の前の少女が愛しすぎて。 「断らないのね。これだって立派なチョコレートよ」 「それはだって……」 「ごめんなさい、美希は知らなくて飲んでしまったんだものね」 「違うわ。そうじゃない」 「じゃあ……どして?」 「断らない理由、教えて欲しい?」 頷くせつなの頬はほんのりと赤い。意を決して放たれる美希の言葉によって、よりいっそう赤みを増すとも知らずに。 「す、好きなひとが作ってくれたからよ!」 そう言うと、美希はカップの中身をひと息に飲み干した。まるで、恥ずかしがるのをごまかすように。 「あっつ!!」 「バカね、火傷するわよ」 慌ててせつなは立ち上がると、冷蔵庫から氷を取り出し手早く氷水を準備して美希に含ませた。 氷水を飲んで、ふう、と息をついた美希の横に、せつなが座る。 「もう……仕方のないひとね」 「ごめん、カッコ悪くて……呆れた?」 「そんなことないわ。さっきの美希……すごく素敵だった」 「……ホント?」 「ホントよ」 見つめ合う。美希はせつなを、せつなは美希を。お互いの瞳に互いの姿を映し合い、そして――――。どちらともなく身体が近づいていき、くちびるが今にも触れ合いそうになった、その時。 お店と繋がるインターフォン越しに、美希の母親レミの声がリビング中に響き渡る。 『せつなちゃ〜ん、手伝ってぇぇ!!』 その拍子に、驚いてビクッと身体を震わせながらお互いのくちびるが触れ合った。歯も当たったらしく少しだけ鉄の味がした。 「もう! ママのせいで、ファーストキスの味が鉄の味になっちゃったじゃない!!」 くすくすと笑うせつなを見下ろし、腕の中にしまいこむ。 「約束よ。あとで絶対リベンジするって。……場所はアタシの部屋で、ね?」 「……ええ」 「せつな……いい匂いがする」 「それは……チョコレートを刻んでたから……」 「違う。シャンプーの匂い」 ぎゅっとくっついてせつなの髪に顔を埋め、香りを楽しむ美希は、せつなをなかなか離そうとはしない。 再びレミの叫び声がリビングに響き渡って、渋々せつなを離す。やっと手に入った彼女を離すのが名残惜しくて仕方がない、そんな気持ちでいっぱいになりながら。 美希の気持ちを察したのか、いったんお店に向かったせつなが小走りに近づいてきて、美希の耳元でささやいた。 「大好きよ、美希」 去り際にくれた、頬への優しいくちづけ。そのキスで、言葉で、恥ずかしそうな笑顔で、美希の心はすっかり沸騰させられてしまう。 ひとりリビングに残された美希は、せつなのくちびるが触れた部分を無意識になぞり続けた。 ホットチョコレートさながらに熔かされてしまった美希の心は、静かな幸せのなかで揺ら揺らとたゆたい続けていた。
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「わっ!せつな、どうしたの?」 いつものように玄関を飛び出したラブは、そこに突っ立っているせつなの背中に、危うくぶつかりそうになった。 「ラブ。今日の空、なんだか不思議よ。海みたいに青くって、ほら、白い波まで立っているみたい。」 新学期が始まって一週間。二人の頭の上にあるのは、いつの間にか夏のベールを脱いだ、高く澄んだ空の青。ちょうど見上げた辺りに、まるで薄い反物を広げたような、雲の模様が見える。 「ああ、うろこ雲だね。」 「うろこ雲?」 首をかしげるせつなに、ラブはニコリと笑って説明する。 「うん。なんかさ、魚のうろこみたいに見えるでしょ?あれはね、秋によく見える雲なんだよ。」 「そう。なんだか本当に、大きな魚が空を泳いでいるみたいね。」 感心したようにそう言って歩き始めるせつなの腕を、ひんやりとした空気がなでる。ここ二、三日で、朝晩がめっきり涼しくなってきた。 「ラブ~!」 「せつなちゃん!」 商店街を歩いていると、向こうから美希と祈里がやってきた。 「おはよう。」 「おはよう、美希タン、ブッキー。」 「なんだか急に秋らしくなったわね。見て。すっごくキレイなひつじ雲。」 美希が蒼い髪をふわりとなびかせて、空を仰ぐ。 「ひつじ雲?」 再び首をかしげるせつなに美希が指差したのは、さっきラブと見た、あの雲の波。 「あの雲、うろこ雲って言うんじゃないの?」 「ああ、そんな呼び方もあったっけ。でも、ほら見て。雲の模様が、ひつじの群れみたいに見えるでしょ?」 「そう言われれば、小さいひつじたちにも見えるわね。なんだかのんびりと、草でも食べているみたい。」 素直にそう言ってせつなが頬を緩めると、 「え~、美希タン。あんな細かい雲でも、ひつじ雲って言うの?ひつじ雲は、もっとひとつひとつの雲が大きいときに言うんだと思ってたよぉ。」 ラブがちょっとだけ不満顔。 「そう?でも、アタシにはひつじに見えるわよ?うろこにしては、大きいじゃない。」 美希も少しだけムキになって、言い募る。 「もう、二人とも・・・。ねぇ、ブッキーは?あの雲、うろこ雲なの?それとも、ひつじ雲?」 困ったせつなが思わず祈里に助けを求めると、彼女は上目づかいにせつなを見つめて、これまた少しだけ、いたずらっぽく笑った。 「えーと、あの雲は、いわし雲かな。」 「え~!今度は、いわし?」 「そんな呼び方、あった?」 「ブッキー、ずるいよぉ。」 仲間たち三人に詰め寄られ、祈里は首をすくめて、再びいたずらっぽく笑う。 「いわし雲って言う呼び方はね、いわしの群れに似てるから、っていう説もあるけど、ああいう雲が出ると、いわしが大漁だからなんだって。」 「やったー、今日は大漁だぁ!って。あたしたち、漁師さんじゃないし!」 「ブッキー・・・相変わらず、いろんなことに詳しいのね。」 「あれ?わたし、褒められてるの?呆れられてるの?」 朝からテンション全開のラブ。大袈裟にため息をつく美希。きょとんと小首をかしげる祈里。そんな三人の様子に、せつなが思わず、クスクスと笑いだす。それにつられて、結局全員、顔を見合わせて、ひとしきり笑った。 「雲ひとつとってみても、いろんな名前があるのね。なんだか・・・ロマンチックね。」 少しはにかみながらそう言うせつなに、美希があたたかな目を向ける。 「秋は特に、空も雲もキレイだからね。昔の人も、いろんなインスピレーションが湧いちゃったんじゃない?」 「そうだね。あと、雲を波に喩えて、白波とか、波雲っていう素敵な言い方もあるみたい。」 「えーっ!それホント?ブッキー。」 再び始まった祈里のウンチク話に、ラブが突然嬉しそうに大声を上げる。 「せつなっ!この雲見て、せつなと同じように感じた人が、昔の人の中にも居たんだね!美希タン、ブッキー、あのね。今朝、せつなが空を見上げて、空に白い波が立ってるみたいって、そう言ったんだよ。」 「もうっ、ラブったら。そんなこと、大きな声で言わないでよ。」 真っ赤になってうろたえるせつなの肩を、祈里がやさしく叩いて、空を指差した。 「あ、ほら、せつなちゃん。さっきのいわし雲が、少しずつ繋がって、ホントの波みたいになってきたよ。」 見上げる彼女たちの目の前で、空がその模様を変えていく。千切れた雲が縦に繋がって、波のような、段々畑のような新たな顔を見せる。 空に広がる白い波は、なぜかいつもより、空を、より青く、突き抜けるように高く、どこまでも広く感じさせて・・・。 (なんだか今日は、いいことがありそう。) 口には出さないけれど、四人とも、同じことを考えていたのだった。 まだ青々とした街路樹の梢を、風がやわらかく、さわさわと揺する。四ツ葉町の美しい秋は、まだまだ始まったばかりだ。 ~終~
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まったく、ママったら 自由なんだから。 アタシがひとりでも完璧に 生活できるからいいようなものの、 普通、中学生をひとりで置いて 旅行なんて行かないわよね。 学校から帰ったアタシは、がらんとした 家の中を見て、つい愚痴ってしまった。 今日も、シフォンの争奪で 戦闘となった。 戦闘の後は、気持ちがしばらく 高揚したままになる。 リラックスするように、 長めに半身浴していたけど、 お風呂を出ても、汗がひかない。 バスタオル一枚巻いて、居間まで行く。 ひとりだから、こういうことも出来る。 高揚感はなかなか治まらず、 軽い興奮状態になっている下腹部から、 ひと筋、滴り落ちる感覚があった。 少し、慰めちゃおうかな...。 リンクルンが鳴った。 事務所のマネージャーさんだ。 今度の撮影のことでしばらく話す。 場所、日時、スケジュール。 結構、覚えないといけないことが多い。 インターホンが鳴る。 電話をちょっと待たせて、 インターホンに出る。 「やっほー!美希たん!」 ラブの声。 電話に戻り、話しながら鍵を開けに行く。 「...はい、わかりました。じゃ来週。」 リンクルンの通話を切り、ドアを開ける。 「朝ご飯用にコロッケ持ってきた...よ?」 ラブが固まった。 私はしばらくして、自分がバスタオル一枚だと いうことを思い出した。 「あっ!ちょっと待っ...きゃ!」 あわてて後ろに下がったアタシは つまづいて仰向けに転倒してしまった。 「いったぁ...」 お尻を押さえながら頭を起こす。 バスタオルが大きくはだけている。 恥ずかしい部分が、ラブの正面に。 さっき感じた、滴り落ちる感覚。 ラブに見えているであろうその状態が、 簡単に想像できた。 「...いやーっ!!!!」 アタシは部屋に駆け戻り、 シーツを頭から被った。 ラブに、見られちゃった。 手で、触れてみる。 音がするほど、あふれている。 こんな状態なのに...。 ラブは呆れて、もう 帰っちゃったかな...? カチャリ。 部屋のドアが開いた。 アタシはまた恥ずかしくなり、 シーツの中で体を丸めた。 「...美希たん...」 「来ないで...」 こんな姿、ラブにまた 見せられるわけ無いじゃない。 「...美希たん、こっち見て...」 そっと毛布から顔を出し、 ラブの方を振り返る。 街灯の明かりが薄く差し込む部屋に、 ラブの体の線が浮かび上がっている。 何で、裸なの...? 「...これで、おあいこだよ。」 ラブの瞳が、潤んでいる。 「あたしも、同じ感じなの...」 「...しよ...」 ラブがベッドに乗ってくる。 「ひっ...!」 アタシはベッドを後ずさりするが、 すぐに壁に突き当たる。 声が出ない。 体が動かない。 ラブが近づいてくる。 切なそうな表情。 シーツを取られる。 やめて。 その表情、やめて。 でないと...アタシ... バスタオルが、取り払われる。 来ないで。 女同士でこんなこと、やめて。 ラブの潤んだ瞳に、 見つめられる。 来て。 このまま、して。 顔が近づき、 ラブが目を閉じる。 だめよ。 いいのよ。 唇が重なった。 やわらかくて、あたたかい感触。 頭のてっぺんまで痺れが来て、 体がブルブルと震えた。 もう、抗えなかった。 ラブの舌を、受け入れた。 ゆっくりと、深く、絡める。 「んっ...んんっ...」 ラブの舌が、耳の回りを撫でる。 「美希...」 名前で呼ばれ、アタシは全身が歓喜で ゾクゾクと震えるのを感じた。 もっと、言って。 重ねた唇で、後ろに軽く押される。 アタシは、ラブを迎え入れるように、 仰向けに倒れた。 ラブの体が、ぴったりと密着する。 「美希、あったかい...」 ラブの体温と、胸の鼓動を感じる。 ラブの指が、アタシの胸を可愛がる。 硬く屹立した先端を優しく撫でながら、 舌がアタシの耳の後ろから首筋を這う。 「ふぅ...ん...」 自分でも信じられないような、 甘い声をあげてしまった。 「美希...」 ラブの手が下に降り、アタシの 敏感な部分に到達する。 すでに音を立てるくらい蜜が出ているそこを ラブの指が優しく散歩する。 「はぅ...うん...」 腰が、無意識に次の快感を求めて 不規則に跳ね回る。 アタシ、ラブに愛されてる。 そう考えるだけで、アタシの敏感な部分からは とめどなく蜜があふれる。 ラブの指が、入ってきた。 少し、痛い。 「痛い?」 「ううん、大丈夫...」 「美希...とっても綺麗」 ラブの唇が重なり、舌が入ってくる。 舌の動きとシンクロするように、 アタシの中で、指がやわらかく動く。 痛みは熱さに変わり、やがて 体中を駆け回る快感に変わる。 中が、自然にうねりだす。 「んっ...あぅん!...うんっ...!」 アタシはラブの髪留めを外し、 髪を両手でくしゃくしゃと撫でながら ラブに唇を強く押しつけた。 察したかのように、ラブの舌と指の動きが 速く、深くなる。 「んんんんんーっ!」 目の前に星がチカチカするような感覚があり、 体が、大きく跳ねた。 痙攣はやがて弱くなり、 アタシは息も絶え絶えのまま、 ラブの顔中に唇を這わせた。 ぎゅっと抱きしめる。 せつなのところに帰る前に、 もうちょっとこのままでいさせて。 アタシも、ラブのこと、 ずっと好きだったんだから。
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12月に入ってからラブの落ち着きがない。 元から落ち着きなんてあるのか?と問われると反論のしようもないのだが、 いつもにも増して言動もオーバーリアクション気味だ。 まるで靴にバネでも仕掛けてあるのでは?と疑いたくなるくらい、 普通に歩いていても踵が地に付いてない。 「だって!!クリスマスなんだよ!!」 少し落ち着いたら?とせつなが呆れたり、苦笑いする度に ラブはそう答える。 全く答えになっていないのだが、それ以外に答えようがないらしい。 確かに言われてみれば落ち着かないのはラブだけではない。 美希や祈里、クラスの友人も何だかいつもより笑顔が増え、 お喋りしていても、いつの間にか話題はクリスマスの事になっている。 そして、気が付けば町全体がソワソワと浮き足立ち、赤と緑を基調とした 飾り物があちこちに顔を出している。 冬のはずなのに、雪をモチーフにした物も多いのに、町の気温が ほんわりと上がった気分にさえなる。 ラブはせつなにクリスマスを説明しようとしたが、今一つ要領を得ない。 「あのね、外国の神様が産まれた日なんだ!」 「サンタクロースって赤い服着たおじいさんがプレゼントくれるの!」 「その日はね、家族とか友達とパーティーしたりするんだよ!」 「ご馳走食べて、ケーキ食べて、プレゼント交換するの!」 「恋人同士の一大イベントなんだよ!」 ラブは息咳切って説明してくれるのだが、せつなには、 「?????」 な、様子だ。 外国の神様の誕生日なのに、プレゼント貰えるの、どして? サンタクロースって人が神様なの?え?違うの? 家族や友達と交換するプレゼントとサンタクロースがくれるプレゼントは 違うの? 家族と恋人とどっちと過ごすのが本当なの? そもそも何で外国の神様の誕生日に…… せつなとしては、ただ疑問に思った事を聞いただけなのだが、 ラブは疲れた顔で少し遠い目をして、 「……とにかく、そう言うモノなんだよ。せつな。」 「…………。」 結局、ラブにもこう言う事!とはっきり説明は出来ないらしい。 何でも、雰囲気とフィーリングだそうだ。 埒があかないので、自分で調べる事にしたせつなだが、調べる内に 奇しくもラブの説明はどれも間違いではない事が分かり苦笑を禁じ得なかった。 「確かに、外国の神様の誕生日で、サンタクロースがプレゼントをくれて、 家族や恋人と過ごす大切な日……、みたいね。」 特に、クリスマスに共に過ごす恋人がいない、と言うのは 妙齢の男女にとっては切実な問題らしい。 取り敢えず、この国においてクリスマスと言うのは、「サンタクロース」、 「プレゼント」、「クリスマスケーキ」と、いくつかの重要キーワードを 押さえていれば、それがその人なりのクリスマスで通用する…、 と、言う事…、らしい?違うかしら?……まあ、いいわ…。 (……プレゼント、どうしよう。) サンタクロースのプレゼントは良い子にしてれば、夜の内に枕元に 置いて行って貰える物で、大切な人やお世話になった人には 自分で考えた、心の籠った物を贈る……らしい。 ラブ、美希、祈里には当然用意する。お父さん、お母さんにも何か贈りたい。 出来ればタルトとシフォンにも……。 しかしながら、自由になるお金と言えば月に一度のお小遣い。 それにたまに貰える買い物のお釣とお手伝いのお駄賃。 到底5人+2匹に満足のいく贈り物が出来るかは……。 勿論、お金を掛けるだけがプレゼントではない、(この後、 両親へのプレゼントは金欠ラブからの申し出で、連名&ブッキー指導の元で手作りする事て解決した) のは分かってるのだが……。 (何か、私にしか出来なくて…尚且つ皆が喜んでくれそうなモノ……) ふと、せつなに閃くものがあった。 (……やって、やれない事は…ない?) 腰のポーチに下げたリンクルンから、アカルンを呼び出す。 「ねぇ、アカルン。どう思う?」 「キー?」 取り敢えず、やれるかどうかやってみよう。 クリスマスの事を調べている間に、何度も出てきた言葉。 『ホワイトクリスマス』、クリスマスに降る雪は特別なものらしい。 しかし、この国では特に雪の多い地域でない限り12月、それもクリスマス当日に 雪が降るなんて奇跡に近い。 (クリスマスに雪が降れば、皆喜んでくれるかしら?) もしそうなら、クリスマスに雪を降らせる事が出来たなら……。 家族や友達だけでなく、町の人みんなに喜んで貰えるかも知れない。 せつなはこの町で幸せになれた。それは勿論、ラブやみんなのお陰。 それに、この町の人すべてのお陰。せつながやって来たのが この町でなかったら、自分はこんなにも素直になれなかった。 こんなにも、幸せを受け入れられなかった。 そう思うから………。 せつなは手のひらの上で自分を見上げてくる、相棒の赤い妖精に微笑みかける。 「やってみましょうか?アカルン。」 「キィー!!」 そうと決まれば具体的に計画を練らないと。 まず、練習……と言ってもそこかしこでするわけにはいかない。 それに、そう何回も出来ないだろうし……。 当日の天気はどうなのかしら? 出来れば24日か25日が理想的だけど、無理そうなら23日…。 せつなはぐるぐると考えを廻らせる。 本番は一発勝負。失敗は許されない。 誰にも内緒で準備を進め、決行する……。 (当日まで、ラブにも気付かれないようにしないとね!) …… ………… ……………… 「せつなの様子がおかしい?」 こくり、とラブがジュースを啜りながら頷く。 ここはドーナツカフェ。ラブの他には美希と祈里。 もうすぐ冬休み、と言う放課後。いつものように集まってお喋り。 クリスマスパーティーの相談でもしようと思っていたのだが、せつなの姿はない。 用があるから後から行く、と一人でどこかへ行ってしまった。 「どんなふうに?」 「なんか、時々一人でニマニマしてるんだよね。それに、何だか寝不足みたいでさ。」 「寝不足?」 「そう。どうも夜中にアカルン使ってどっか行ってるみたい。」 「………。」 「………。」 「隠し事、してるみたいなんだよね。」 「せつなちゃんに聞いてみた?」 「それとなくは…。」 「せつな、なんて?」 「……キョドってた。でも、悪い事してるわけじゃないみたいなんだよね。 なんか、楽しそうだし。」 美希と祈里は顔を見合わせる。 せつながラブに隠し事。隠し事になってないみたいだが、珍しい。 まぁ、イース時代の事を考えればラブにバレバレな隠し方しかしてない様子 からして、大袈裟なものではないと思うが。 「まぁ、楽しそうなら気にするほどの事じゃないんじゃないの? せいぜいイタズラ仕掛けようとしてるとか?」 うーん、とラブが唸っている内にせつなが息を切らせて走って来るのが見えた。 「ごめんなさい、遅くなっちゃって。」 息を整えながら、席に着くせつなに、ラブが微妙な視線を向ける。 「ねぇ、せつなちゃん。何かラブちゃんに隠し事してる?」 「!!!」 「!!!」 「!!!」 「ブッキー……、そんな豪速球のど真ん中ストライクを…。」 「うん、してるわよ?」 「!?」 「!?」 「!?えっ!何??何を?」 「そんなの、言えたら隠し事にならないと思うけど。」 確かにごもっとも。 せつなは、もう少し待ってね?すぐにわかるから。 と、意味有り気な微笑み。 そんな風に言われたら、これ以上は追求出来そうにない。 そんな訳で、その日はそのままパーティーの段取りを付けてお開きとなった。 「どうしたのかしらね、せつな。」 「ね、あんなせつなちゃん初めてかも。」 「あれじゃ、ラブも気になるわよねぇ。」 「でもせつなちゃん、すごく楽しそうだったね。」 美希と祈里は顔を見合わせながらクスクスと笑いを漏らした。 ラブには悪いが深刻ぶってるラブと、浮かれた感じのせつなとのギャップが 何だか可笑しくて。 ひょっとして、せつなはクリスマスに何か サプライズを用意してるのではないだろうか。 たぶん、いやきっとそうだろう。 また二人は微笑む。 せつなにとっては初めてのクリスマス。 準備も含めて楽しんでくれてる様子が嬉しくて。 「まぁ、すぐに分かるって本人も言ってるんだし。」 「そうだね。クリスマスのお楽しみが一つ増えたよね。」 25日。町はお祭り最後の夜に、何だかさわさわとざわめいていた。 公園には大きなクリスマスツリー。明日の朝には撤去 されてしまうので、 夜の公園は記念撮影したり、ドーナツ(カオルちゃん特製 クリスマススペシャルバージョン)片手にお茶したりする人で溢れかえっていた。 勿論、クローバーの4人も公園で待ち合わせ…のはずだが、 またせつなはラブを一人で行かせて自分は後から合流すると言う。 「9時丁度に空を見てくれる?」 と言う意味深な台詞を残して。 「まあったく!何しようってんだか。」 さすがのラブにもせつなが何かサプライズを用意しているのは予想出来た。 しかし、それが何なのか、全くもって見当も着かない。 「ま、それもあとちょっとか……。」 楽しみにしてるよ?せつな! 美希と祈里に合流し、せつなの伝言を伝える。 「何しようってのかしらね、あの子。」 「ラブちゃん、何か分かった?」 「それが、全然!あっ、もうそろそろ9時だよ!」 3人は揃って空を見上げる。 その時、チカッ!チカッ!と、遥か上空で赤い光が二回瞬いた。 「!!今、光ったよね?」 「ひょっとして、アカルン?」 「え?でも、なんで?どう言う意味?」 3人が訳も分からず囀ずっていると、頬を真っ赤にしたせつなが 走り寄って来た。 「みんな、お待たせ!」 「ねぇ、せつな!今光ったのアカルンだよね?」 「一体何なの?空の上にテレポートしたの?」 「ねぇ、せつなちゃん。そろそろ種明かししてよぅ。」 「しっ!ほらっ、空見てて!」 その時……… 「あっ!!!雪?」 「え?マジで?」 「ホントだ!雪、雪降ってきた!」 「えー?信じられない!ホワイトクリスマス?」 わぁっ!とあちこちから歓声が上がり、子供達が「雪だ!雪だ!」と はしゃぎ回る姿が見える。 その光景を見て、満足そうに頬を紅潮させるせつな。 呆然と降り注ぐ雪とせつなを交互に見つめる3人。 「……せつな。せつなの仕業だよね?」 「でも、一体どうやって……?」 「アカルンに天気を操る力なんてなかったよね…?」 せつなはニンマリと笑って、種明かし。 「あのね。アカルンで雪の塊と一緒にテレポートしてきて、空の上で ハピネスハリケーンで砕いたの。」 結構加減が難しかったのよ? あんまり細かく砕くと地上に降りる前に溶けちゃうし、かと言って 大き過ぎると危ないし…。 量もある程度欲しいから、溶ける分差し引いても、かなりの大きさだったし…… 「……って、どしたの?みんな。」 声も出ない3人に、せつなは小首を傾げる。 もしかして、気に入らなかった?せつなが不安になりかけた時、 ラブ、美希、祈里は弾けるように笑いだした。 「もーぅ!せつなってば、信じらんないよ!」 「アカルン有効利用し過ぎ!」 「色々想像したけど、その発想はなかったかも!」 3人はせつなをもみくちゃにして髪をくしゃくしゃにかき混ぜる。 「ちょっ!ちょっと!やめてよ!」 せつなはそういいながらも抵抗しない。 (喜んで貰えたの……かな?) その夜、四つ葉町に起きた異常気象。 ホワイトクリスマスにはしゃいだ人々は、公園を一歩出ると違和感に 首を傾げた。 そして、違和感の正体に気付くと唖然とした。 公園の外には、雪なんてひとひらも降っていなかったと言う事実に。 この事は、後々まで四つ葉町の不思議として語り継がれる事になる。 その奇跡の仕掛人は、赤いドレスの少女サンタ。そして、寄り添うのは トナカイではなく赤いハート型の小さな妖精。 真相を知っているのは、彼女達と固い絆で結ばれた3人の少女だけでしたとさ。
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かまくらの中で。 「はい、お餅焼けたよ!熱いから気をつけて」 「ブッキー、お醤油取って」 「はいどうぞ。海苔もあるわよ」 「七輪ってあったかいのね。知らなかった……」 「美希ちゃんかけすぎよ!」 「いいの。いただきまーす。熱っ!」 「んもー、だから言ったのに」 「美希ちゃん見せて!」 「らいろうぶ、らいろうぶ……」 「いいから早く見せて!」 「真っ赤なはんてんは幸せの証……」 「ぶつぶつ言ってないでせつなも食べよ?」 「大変!唇の端っこが赤くなってるわ!すぐに冷やさないと!」 「ホ・・・ホントに大丈夫だから・・・。」 「ちょっと待ってて!」 そう言うが早いか、壁の雪を削って集め、美希の火傷した箇所に押し当てるブッキー。 「ちょっ、そんな事したらブッキーの手が冷えちゃうじゃないの!」 「大丈夫・・・。美希ちゃんのためだったら私、どんな事でも・・・。」 「ブッキー・・・。」 「あ~あ、二人の世界に行っちゃったよ・・・。 仕方が無い、もう一個かまくら作ってそっちに移動しようか。せつな。」 「もぐもぐ・・・(そうね・・・。)」 ラブせつ二人、かまくら内でしばらくキャッキャウフフしまくり、疲れて少し会話が途切れた時に せつなから、ぽつりと。 「ねえ、ラブ」 「え?」 「思ったんだけど・・・ここなら、今、誰にも見られないわね・・・」 「・・・・・え?・・・え?・・・・・ぇええぇぇーーーー?!?!? せ、せせせ、せつなそれってどういう・・・・$*&%”@~~****!」 「こういう・・・」 「!!!!!!!」 「ラブ・・・。」 「(はっ、はわわわわ、せつなの手が、顔がこっちに、はわ、はわわ~・・・)」 「こういう・・・。」 「!!!!!~~っ、はわわ、はわはわはわ!」 「ほ~ら、こんなに変な顔~、うふふ、うふふふふ。」 「・・・はわっ!、せ、せつな酷いよ~、いきなり口に指突っ込んで変顔させるなんて~。」 「あははは、ゴメンなさい、ちょっと空気重かったから、うふふふ。 (あ、危ないとこだったわ。咄嗟にふざけて誤魔化したけど、一瞬本気でラブの唇を奪いそうに)」 「もーせつなったらー(笑) (なーんだ焦って損しちゃった。てっきりせつなからキスでも されるのかと・・・あたしったらヘンな期待し過ぎ~、せつなにバレなくて良かったよ!)」 ラブ「へっくちん!」 せつな「くしゅん」 美希「へくち」 祈里「くしゅっ」 タルト「そりゃそーやで。」 シフォン「きゅあ?」 アズキーナ「は、恥ずかしい…」 あゆみ「これ飲んであたたまりなさい、みんな」 せつな「甘い香りがする.....」 ラブ「ココア?ちょっと違うかなー」 祈里「うん。ちょっと違うかも」 美希「おばさま、完璧すぎですよ」 あゆみ「さっすが美希ちゃん!」 ラブ「ん?」 せつな「???」 祈里「あっ!なるほどね」 美希「ブッキーならわかると思ったケド」 ―――ホットチョコレート――― あゆみ(いつまでも仲良くねっ♪) 「もう食べれないや」 「私も…」 「ブッキー。それは来月の話でしょ!」 「ごめんなさい。でも次焼けちゃった…」 山盛りのクッキー。普段料理のしないブッキーはただひたすら焼まくるのでしたw 圭太郎「だったら僕が食べちゃうよ~」 ラブ「とぉ!」 せつな「おとうさん!!」 美希「おじさま…。見損ないました…」 祈里「あれれれれ???」 あゆみ「いいのよ。あとでたっぷり叱っておくから、ね♪」 那由他「だったら私が食べようかしら」 せつな「お、お前は!」 あゆみ「あらいらっしゃい」 ラ美ブ「えぇぇぇぇ!?」